[コメント] あにいもうと(1953/日)
復興発展をとげてつつあるであろう都心から、過去を失いつつさらにとり残されていく都市近郊の淀みと焦り。そんな空気がひしひしと伝わってくるのだが、兄(森雅之)の妹(京マチ子)に対するやつ当たり的言動と、それへの妹の心情の振幅が見えにくい。
もん(京マチ子)はそんな、時代と男に対してある種の愚直さを持った女のように描かれている。たぶん50年代にあっては、ほんとうはそれでよいのだろう。
でもどうしても、兄と妹の感情的磁場の起伏のなさにもの足りなさを感じてしまうのは、私が今井正版(76年)の「時代」と「倫理」と「心情」が激突する草刈正雄と秋吉久美子の壮絶な兄と妹の関係を先に観てしまっているからだろう。成瀬版に責任は、まったくないと思う。
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