コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(2009/スウェーデン=デンマーク=独)

2よりは出来がいいけど、一作目の面白さを知ってる身としては…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この作品は3作全部を合わせて考えるとなかなか面白い。

 一作目がほぼ純粋なサスペンス。二作目がアクション。そして本作三作目が法廷ものに仕上げられ、三作みんなが切り口が違う。

 ただ、実質的には『ミレニアム2 火と戯れる女』(2009)よりは面白く仕上がっているものの、1作目『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009)の面白さには及ばず。と言ったところ。観てるこっちも半分は惰性で観てる気分。

 法廷ものとして観る限りではかなり粗末な感があり。今回裁判にかけられるリスベットの罪状は父親に対する殺人容疑だったが、2作目で挙げられていた保護観察官殺しについては無視され、叩けばいくらでも埃が出る“天才ハッカー”についての余罪は言及さえされず。いくら陪審員制度を取っているとはいえ、あれだけで完全無罪になることは無かろうと思うんだが、そのへんの描写が甘過ぎ。原作ではどうなのかわからないけど。

 ただ、2よりも良かったのは、リスベットとミカエルの関係についてだろうか。2の方は二人が完全に別々に行動していて、同じ事実を時間差で見せられるので、そのへんの重複がどうしもかったるくなっていた。本作でもほとんど二人は顔を合わせてないが、それでもちゃんと連携を取れている点だろう。この話だとリスベットがほぼ完全に受身状態なので、彼女のために自分のできることを最大限してあげようというミカエルの努力というか、健気さが感じられるし、惚れた女のためなら自分の将来も考えずに手持ちの武器をだし惜しみなく使ってしまおうという姿勢がいい。

 結局二人が顔を合わせないのは、お互いに頼ってしまうことを避けている事があるのだろうが、好きな相手を思い、そのために働きながらも、あくまで自分のポリシーを守り続けるストイックさもあるので、なかなかに格好良い人間関係が作れている。

 だからラストのあっさりした別れも意味が出てくる。とりあえず今の関係のまま、お互いにできることをしよう。と言うことを、言葉を用いずに互いに確認したということなのだろう。

 惜しむらくはこの作品、続編は出せないって事なんだよな。リスベットとミカエルのつかず離れずのこの関係は、サスペンス作品ではずいぶん映えるだろうから、それが出来ないのは残念なところだ。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)IN4MATION[*] セント[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。