[コメント] 二十四の瞳(1954/日)
私的意見だが、溝口が美術の監督、新藤が心理の監督だとするならば、木下は音楽の監督だと思う。ほか田中裕子主演版と比べて
僕らの世代には田中裕子版の方がむしろメジャーになってしまったし、僕もそっちを先に見てぼろぼろ涙を流した人間の一人だ。
ただ比較してみると、田中裕子版は暗い。たしかに泣けるがとにかく暗いんだ。
壺井栄の原作は戦争哀愁というよりもむしろ明日に向かって生きようという明るさに満ちたものになっている。
そういう点で、木下版の方がより壺井栄文学に適した演出だと思う。これ以外の評価をつけられない。
レビュー欄で音楽の監督だと前述したが、バックサウンドの流し方とか子供唱歌の混ぜ方とかが本当に巧いんだ。
ところどころ挿入される語り口の字幕も、詩的で叙情ある。
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ただ、田中裕子版の方が演出巧いなと思わせる場面もある。
・先生が落とし穴にはまったシーン
・目の見えないソンキが、写真を見て語るシーン
この2箇所は物語の重要なキーポイントであるが、木下版はここを端的に描きすぎた気もする。
特にソンキのところは物語中でもっとも涙を流せるクライマックスなのに、田中裕子版よりあっさり終わってしまった。
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あと全然関係ないけど二十一世紀のこの少子化時代。
24の瞳の小学校の教室が全国各地で標準になりつつあるなと思うぞなもし。
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