[コメント] 白いリボン(2009/独=オーストリア=仏=伊)
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私は戦前ドイツ農村についてまるで無知だ。日本なら東北農村部の貧困が対中膨張の遠因だったのだが、本作の北部ドイツ農村は男爵の封建領主の下、経済的には安定しているように見える。これはあり得ないことのように見える。ハイパーインフレを経験したドイツ都市部の影響はなかったのだろうか不思議だ。
さらにルター派なんだろう、プロテスタントの思想について、本作の訴える処がほとんど判らない。例えばベルイマンやタルコフスキーのキリスト教について、我々は判ったような気になるが、それは名監督たちの派手な演出による処が大きいのだろう。本作のような密やかな作品を観ると白旗を上げざるを得ない。
別に凡作ですねと云ってもいいんだけど、何か意味があるのかも知れないから保留したいという気分。子供に白いリボン結んでどうしたという辺りである。宗教でない部分、医者と看護師の不倫の破綻など平凡でどうということはないし、扉を開けたら首吊り死体みたいな描写は平凡だろう。ハケネは回想形式が上手くない
それでも幾つかの驚くべき断片はある。素晴らしいのは、父親が笛を出せと息子を問い詰め、息子は泣いてそんなものはないと抗弁し、父が諦めて退出すると部屋のなかから笛の音が聞こえる件。人間の心理を物の世界が裏切るのであり、人間より物が真理に近いのだ。シュニッツラーの傑作短編の味があり、さすがドイツ系列と思わせられる。
あと、語り手の先生と子守の恋愛の初々しさがとてもいい。血も涙もないハケネのこと、最後は破綻させるだろうと見ていたら、この二人には手をつけなかった。ハケネ確か初のモノクロ映画。デジタル技術が成熟するのを待っていたのだろう、本作の全てにピンが合う神経質な撮影は、作品の主題と親和性が高い。
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