[コメント] わたしを離さないで(2010/英=米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
もし臓器移植を繰り返す事で皆が100歳を越えて健康に生きられるなら。もし臓器供給源としてのクローン技術が確立されたら。そして、もしそうした世界が既にこの世に完成してしまっていたら。
あなたは、どうしますか。そして、あなたがそのクローンだったら、どう生きますか。
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シチュエーションドラマは今生きている私達と無関係なら意味は無い。全力で参加する必要も無い。しかし、本当にそうだろうか? そうした現実は今本当に存在しないのか? この世界は本当に虚構と言い切れるか?
臓器移植をしに海外へ出て行く日本人は存在する。臓器の出所は何処から?
脳死提供は日本では非常に遅れている。脳死、即ち瀕死の状態なら提供は美談と言えるだろうか。次々に臓器が摘出されると大きな空洞だけが残る。そこには希望というより、儚さしか見出せない。でもそれで良いのかも知れないが。
クローンと臓器提供は可能性としてはカズオ=イシグロでなくても考えられていた。しかし「既に存在する世界」として描いたのがこの作品の傑出したところである。そして現実の医学は再生医療、即ち人工幹細胞からの臓器製造という予想外の領域に進もうとしている。これはカズオ=イシグロの世界を回避するには決定的な進歩だが、そこに不安がない訳でも無い。科学は進歩しても、人間は決してより善くなった訳ではないのだから…。
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わたしは綾瀬はるか・三浦春馬・水川あさみのTVドラマ版「わたしを離さないで」を視聴済みだったので、作品世界は既に了解していたが、そこからの意見としては映画版にはそこかしこに語り足りなさを感じた。ドラマ版があったお蔭で作品により近づけた気がする。言い換えれば、映画版キャストでTVドラマの内容を視たかった、というべきか(特にシャーロット=ランプリング学園長!)。
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