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[コメント] わたしを離さないで(2010/英=米)

原作既読で見る。と云っても、これもかなり前に読んだので、あいまいな記憶と印象しかなく、仔細に小説との相違を指摘することはできない。梗概レベルでは殆ど同じような筋立てだと思えるが。
ゑぎ

 小説では全編キャシー(キャリー・マリガン)の一人語りであった(つまりキャシーの心情を通じて世界が構築され読み手に伝えられていた)ところを、映画では画面で直截的かつ客観的に視覚化して行く分(いくらキャシーのモノローグが流れたとしても)、こちらの想像力の刺激にはかなりの差異がある。小説はキャシーと一緒に思考を深化させる中で名状しがたい感慨に到達するが、映画はキャシーが語らない情景、例えば有刺鉄線にからまったゴミのカットに何らかの象徴性を感じさせられたりする。しかし、映画は端的に云って、原作へのアプローチが繊細に過ぎるようにも思われる。照明も色彩設計もアクターズディレクションも優しく柔らかいが、原作の雰囲気を逸脱しないことに汲々としている窮屈さも感じられてしまう。

 尚、「ギャラリー」と「猶予期間」あるいは「魂」に関する帰結にこだわって見ると映画は小説に輪をかけて現実離れしたファンタジーに思えてしまう(映画は現実を写し取っていると錯覚させる詐欺性があるから)。これらは単なるマクガフィン(プロットを駆動するための装置)として捉えることが肝要だと思う。

(評価:★3)

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