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[コメント] ブラック・スワン(2010/米)

ナタリー・ポートマンの熱演により救われてはいるものの、この作品に頻出するハッタリ映像やサブリミナル効果は、前世紀の漫画でも散見できるくらい新味のないテクニックに過ぎない。映画に馴染まぬ層を相手にするならともかく、擦れた映画マニアを驚嘆せしめるなら小手先の技術では追いつかない。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







同じサブカルチャーとしても、漫画はまだまだ映画の後塵を拝しているのだから、その漫画の効果に例を見出しうるということは、この作品は決して文化の先端をゆくランナーではないことの証明になってしまう。

古くは『デビルマン』(セクシュアルな人体のメタモルフォーゼ、歌舞伎の隈取を活かした人物の内面の変化)から、『ジョジョの奇妙な冒険』(錯視や、不安・恐怖の生み出す幻視の図像化)に至るまで、この作品に新味を感じさせない漫画は枚挙に暇がない。他ジャンルは他ジャンルと見過ごすのは簡単だが、手法としていかに洗練されていようとも、斬新でなければそっぽを向かれるのがこうしたホラー作品の宿命であるのだから、その現実は見据えねばいけないだろう。

実は、この作品を知ったのは町山智浩による『PERFECT BLUE』との類似点を指摘する記事からなので、多少歪んだ観点での鑑賞だったことを告白せねばならないのだが、むしろ今敏のアニメ作品のみの類似で済んで欲しかったのは事実だった。ストーリー運びや登場人物の類型的カテゴライズなど、もはやオマージュとかリスペクトとかに留まるべくもない惨状なのだから、映像的暴力に期待するよりなかったのだから。とはいえ、クエンティン・タランティーノのような生き方もある。オマージュのつづれ織りであることを広言するまでにふっ切れれば、あるいはダーレン・アロノフスキーにも未来があるとも言えるかもしれぬが。

(評価:★2)

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