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[コメント] エンジェルウォーズ(2011/米=カナダ)

誰が「エンジェル」で何が「ウォーズ」なのか全く解せませんが、ザック・スナイダーが放つのはまさに「不意打ち」に満ちたメタファーワールド!
シオバナカオル

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







300』で『ウォッチメン』で『ガフール』で様々な角度から主人公(ヒーロー)であることを描き続けてきたザック・スナイダー監督が、完全オリジナルで仕掛けてきた今作の主人公は、まさかの戦う女の子。

あきらかに「性的」な描写が劇中に散りばめられており、それと「戦う」ことが今作での主人公の選択(生き方)となる。しかし、性的描写を一切排除して完全に別の映像としてメタファー(比喩)化しているのがこの映画全体に流れる不穏な空気感の正体。つまり単なるエンジェルのウォーズで無ければ、マニアックなB級美少女コスプレアクションでも、無駄なCG連発の無説法ファンタジーでも無い。

ゲーム的というか2次元的なアクションの描写をこのようにメタファーで見せるという発想が面白くむしろ非常に簡潔に単純化されたアクションパートには皮肉すら感じられる。

この「いやー何を期待されたのかはよくわからないんですけど、決して一方向でわかりやすい作品じゃ無いんですよ、だからもっと画面見て考えてね」という監督のメッセージは『ウォッチメン』と同様であるが、今作で決定的に違うのは映画のタイトルが『Sucker Punch』(=不意打ち)と既にご丁寧にも教えてくれているところ。またこのタイトルは最終的に主人公不在という今作全体のテーマともダブルミーニングになっているだけに、さして内容を理解せずに『エンジェルウォーズ』などとファッ○ンな邦題をつけた配給陣を呪い殺すしかないだろう。

エミリー・ブラウニングらに歌わせた曲も名曲の数々のカヴァーも良い。メタファーの象徴であるビョークの曲で締めるラストもクールだが、その後に流れる真のエンドロール(劇中に登場した娼館でのステージであろうパラレル映像)への使い方など完璧にカッコいい。

総じて、カッコいい。ぜひ声優陣目当てで手にとってしまった人、お気楽な美少女CGアクションファンタジーだと思って手にとってしまった人にザック監督の別の作品を見てもらいたい。

(評価:★5)

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