[コメント] 八日目の蝉(2011/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
映画の冒頭、「二人の母親」(育ての親と産みの親)から事情が語られる。観客はそれで事件の全貌を知る。涙もろい人は冒頭十分でノックアウトであり、私ももちろん激しくノックアウトされたクチである。
不倫相手の家に生まれた赤ん坊をさらって育てる親を永作博美が演じる。
不倫のもつれがどんな波紋を巻き起こすのか。そんなことを思いながら見ているうちに、永作博美演じる育ての親にどんどん引き込まれてしまう自分を発見した。
実際乳飲み子から幼児に至るまでの子供の世話と言ったら大変以外の何者でもないのだが、そういう過程を経てカオル(井上真央)に無償の愛を注ぐ永作の心の動きが見事なまでに表現されている。
いずれ訪れるであろう、この母(永作博美)と娘の別離を想像するだけで悲しい気持ちにならざるを得ないが、永作博美が綴る過去の話と、井上真央が綴る現在進行形のストーリーが見事なまでに錯綜し、そして物語の最後で重なって未来の希望へとつながるエンディングは、激しくすばらしく私の心を射った
この映画の中に野村芳太郎の「砂の器」の片鱗も見て取る事ができたし、瀬戸内の穏やかな海の風景もすばらしかった。
明るい未来の希望(井上真央のおなかに宿ったこども)につなげながら突然終幕するというテクニックのいさぎよさにもすごく感心した。
全編永作と井上の演技に泣けるという次元の話ではなく、劇場にも関わらずこみ上げる嗚咽を抑える事はできなかった。適当な気持ちで見はじめたが、こんなすばらしい映画に出会えるなどとは心底思っていなかった。これは名画であると思う。
余談ながら、劇中挿入歌の "Daughters / John Meyers" もすごくいい。
Fathers, be good to your daughters Daughters will love like you do Girls become lovers who turn into mothers So mothers, be good to your daughters too
世の父親たちよ、女の子は大事にしなよ。 あんたが愛したように、彼女は他の人を愛する。 女の子はやがて人を恋して母親になっていく。 だからお母さん方も、いい母親でいてくれよ。
という内容が切々と歌われていてすごくいい。
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