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[コメント] スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団(2010/米=英=カナダ)

エドガーライト監督。『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホットファズ』の時に印象的だった(というよりも好感を抱いた)極めて高揚感と疾走感に溢れた編集テンポは健在。
田邉 晴彦

**ネタバレ注意**
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前二作で多用された、インパクトのある効果音とスピーディなカット割りでみせる“アン・トゥー・トロワー”の瞬間芸は、メアリー・エリザベス・ウィンステッドをマイケル・セラが初めてのデートに誘うシーンでのみ見受けるに留まったが、シーンとシーンのつなぎ目を溶解・溶接させることでアップテンポで流麗なストーリーテリングをみせる前半部から、ラストボスの登場からオチまでをするっと脱力感に満ちた演出で乗り切る手腕はさすが。監督と撮影、編集、特殊効果をはじめとするスタッフが、プリプロダクションの時点から「この作品で何を表現するのか」という命題を完璧に共有していなくては成し得ぬ所業である。

また、出演している若手俳優たちの顔ぶれにも触れておきたい。マイケル・セラはジェシー・アイゼンバーグと並んで「オタク俳優」として今後の活躍にも期待。アナ・ケンドリック(『マイレージ・マイライフ』)、アリソン・ピル(『エイプリルの七面鳥』)も好ましい。そして何より、キーラン・カルキン(『マイ・フレンド・メモリー』など)の近影が拝めて良かった。ずいぶん大人になったんだね(泣)がんば!

最後に、少し残念だったポイントも記しておきたい。『ショーン…』はゾンビ映画の、『ホットファズ』はポリスアクションの、そして本作はTVゲームの、それぞれパロディであり、それはエドガー・ライトの作風および作家性と言って、現状過言ではないと思う。ただし、前二作がパロディ映画としてのメタ的作劇法と取りながら、演出は至ってシリアスであり、起きている事態と登場人物たちの熱量の“ズレ”が絶妙なおかしみを生んでいたものだが、本作では劇中のキャラクターたちが外の世界、そして作品のストラクチャーに対してかなり意識的に振舞っている。つまり、「これは映画であり、テーマはTVゲームの再現なんだ」ということを理解した上で、スクリーン上を動き回っているのだ。この場合、エドガー・ライト作品独特の“ズレ”をかなり減じていることになり、それが本作を凡庸なパロディ映画の域に留まらせていると思うのだが、どうだろうか。(この辺はサイモン・ペグが果たしていた役割が大きかったのかも?)

まあ、いずれにせよ、2時間しっかり笑わせてもらった。ありがとう、エドガー・ライト監督。

補記1

エンドクレジットを観ていたら、ナレーション=ビル・ヘイダーだって(笑)

補記2

数々のニンテンドーオマージュが散見。中でも、エンドクレジット後のスコットピルグリムのアバターによる“ロックマン”的なバニシング演出が嬉しかった。

補記3

スコット・ピルグリムが武器にしていた“燃える剣”は、『幽遊白書』の飛影が使う“炎殺剣”のオマージュ?

以上

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)煽尼采 わっこ[*]

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