[コメント] イップ・マン 序章(2008/香港)
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1935年、佛山(フォーシャン)は武術の町と語り始められる。これがまず興味深い。日本で柔道の町、剣道の町、相撲の町など聞いたことがない。道場がたくさんあるし、道場開いて儲けようとやってくる者がいるし、ファンや野次馬が山のようにいる。道場やぶりは負けて「北(広州のことか)へ帰れ」と云われている。本邦の地方でも、こんな町おこしもあるんじゃないかと思った。
香港が戦後、武術映画で盛り上がる一方、本邦で柔道、剣道、空手映画は大して人気が出なかった。代わりに盛り上がったのがヤクザ映画、という気がする。戦勝国で武道、敗戦国でヤクザが流行るという対照は人心の荒廃具合なんだろう。「中国武術は仁、他人と自分を同じに扱う。あなたたちは中国武術に値しない」。そういう武道の正義は古のチャンバラにしか存在しなかった。
日本のアホ将校との異種格闘技が展開されるのだが、しかし空手(唐手)は違和感がある。クロサワは戦中の『続姿三四郎』(45)で異種格闘技を取り上げて、沖縄人らしい造形の月形龍之介の唐手を藤田進の柔道に成敗させている。健さんのデヴュー作『電光空手打ち』(56)では空手の本土への輸出が主題になっている。この辺、どうなっているのだろう。
1937年、開戦で国中が荒廃した。佛山は人口が30万人から7万人に減ったと云われる(現在の人口は600万人弱、隣の広州は1,500万人弱)。中国の第二次大戦の死者が1,320万人だから何も驚くことはないのだった。この報告が一番キツい。
ドニー・イェンは田村高廣似で、田村が役柄で共通して担った良心がWる(市川雷蔵にも似ているが、彼のシニカルには似ていない)。ただアクション自体は私はつまらなかった。CG使いすぎだしカットを割りすぎで、ブルース・リーの迫力は生まれようがない。連続パンチが芳しいくらい。円環描く綿工場の美術も印象に残った。
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