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[コメント] ツリー・オブ・ライフ(2011/米)

マクロな時間と空間の雄大かつ神秘な描写と、切り刻まれ断片として描かれる家族間のヒリヒリした鋭敏な描写がみごとに調和し、その映像構成の完成度の高さに圧倒される。しかし、ベースに流れる一神教に対する盲目的服従ぶりに、いささか閉口するのもまた事実。
ぽんしゅう

この映画は始まって早々に、人(観客)は信仰により創造主の愛に満たされる者と、信仰を持たず自堕落な人生を過ごす者の2種類に分類されるのだと、きっぱり宣言する。で、後者に属する私は、このテレンス・マリックの確固たる哲学的信念をまえにして、あっけなく立つ瀬を半分失うのである。

そして心傷ついた私は、この西欧的一神教思想(まあ、キリスト教と言ってしまってよいのでしょうが)は、表現行為のモチーフとしてはすでに成熟しきっており、言葉としても、物語としても、音楽としても、そして視覚的イメージとしても、この2000余年の時間経過のなかで、すでに完成されてしまった(いささか退屈な)哲学であることを駄目押し的に再確認してしまうのだ。

どんなに、手を代え品を代えて見せられようが、たとえそれが目を見張る映像詩として再提示されようとも、ジャック(ショーン・ペン)の苦悩や喜びも、立つ瀬を半分失くした自堕落な私には「ああ、なるほど、例のあれですね」と他人ごとにしか映らない。

余談ですが、カンヌ国際映画祭について。前々回のパルムドールがヨーロッパ的性悪映画『白リボン』、前回がアジア的プリミティブさにあふれた『ブンミおじさんの森』、そして今回がこの一神教妄信礼賛アメリカ映画。良くも悪くも全世界に目配りを怠らない、カンヌならではの八方美人ぶりが垣間見えます。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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