[コメント] モールス(2010/米=英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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オリジナルは観ていないので、オリジナルがそうなのか、リメイクのせいなのか分からないが、何を主眼に置いた映画なのか分からないというのが正直な感想。 正確には、視点の置き方というか観客の感情をどうリードしていくかが分かってない映画。
お父ちゃん(じゃないけど)が病院に担ぎ込まれる所から映画が始まり、回想のように話が戻りますね。 これだと観客は「何が起きたんだろう?」「どういう事件なんだろう?」という興味を持つのが普通でしょう。 ところが、(事故はともかく)あっさり“正体”を明かしてしまいます。観客の興味はそこで途切れてしまうのです。 この刑事なんか、狂言回しにすらなってない。
一番考えられるのは、少年・少女の叶わぬ恋物語、ということなのかもしれない。 『ロミオとジュリエット』も持ち出してくるしね。 ただ、ロミ&ジュリは「大人の勝手で叶わぬ恋」であり、『ウェストサイドストーリー』は「人の身勝手で叶わぬ恋」なのだ。要するに人次第では回避可能な障害であり、不幸な結末に反省と教訓が得られるのだ。 この映画は「人種の違い」じゃないか。んなもん、どうにもならんわ。
それだったらロミ&ジュリなんぞ持ち出すまでもなく、観客を少年の視点に置けばいいだけのことだったはずだ。 ヒットガール=クロエちゃんが豹変する様を、少年と一緒に観客も驚愕の目で見るべきだった。 しかし、これも早々に“正体”を明かしてしまう。しかも変なCGで。 そのくせ、思わせぶりな無駄に過剰な演出が多い。
もしこの構成、すなわち「観客=神の視点」で描くとすれば、「少年よ!そんな女に惚れちゃいけねーぜ!」という「志村!後ろ!後ろ!」的な物語であると思う。 もしこれが正解だとしたら、観客には「少年が少女に惚れる説得力」と「少女の悪意」が読み取れなければならないはずだが、どっちも無いような気がする。
もしこの映画が「哀しい恋物語」に主軸を置いているとしたら、正直哀しくない。 好きな女が目の前で怪物になっていく様は大変哀しいはずだが、先にも書いた通り、観客は既に見てしまっている。 いやもう、『妖怪ハンター ヒルコ』を観て出直してほしい。
(11.08.07 TOHOシネマズ六本木にて鑑賞)
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