[コメント] キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー(2011/米)
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新世紀に入ってからアメコミヒーロー作品(主にMARVEL)が数多く作られるようになってきた。ライミ監督の『スパイダーマン』(2002)の大ヒットがその皮切りとなったが、これはVFX技術によって、これまでのような安っぽい特撮(自分で書いてぐさっと来てはダメだが)ではなく、画面いっぱいに超常的な力を見せつけることが出来るようになったのが大きい。
ただしそれだけではなく、旧来のファンも、大人もこどもも楽しんでもらうための脚本も重要だろう。かなりギークな人間をブレインに据え、その上できちんと物語を形成するその作り方は見事なもの。どれほど単純に見える物語でも、原作との兼ね合いでかなり気を遣っていることも分かる。ちゃんとマニアにも配慮された作り方に、特オタ関係としては結構嬉しい時代でもある。
しかしそれで『スパイダーマン』以来ヒーロー作品を観ていく内に、その作り方も変化していっていることに気がつかされる。
具体的には、ヒーローを単なる夢物語とするのではなく、実際の歴史の中に彼らをあてはめて今と地続きの物語にしていこうとする試みが始まっているようである。例えば『アイアンマン』(2008)ではイラク戦争、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009)では第一次世界大戦からスリーマイル島事件まで、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011)でキューバ危機など。架空のヒーローを現実に持ってきて、あたかも現実世界と地続きにしようとしているかのような印象を受ける。
これを勝手に考えるならば、これまでのアメリカの辿ってきた様々な危機を正し、「ここにヒーローがいてくれたら」という思いを共有することによってアメリカという国を見ようとしているようにも思える。
だから、本作を通して観ると色々面白い事が分かる。
例えばスティーヴが入隊する動機は、あくまで平和を取り戻すための戦いであり「アメリカのため」という事を言わせず、更に「ナチをぶち殺す」とも言ってない。更に彼が戦うのはドイツ軍ではなくヒトラーという個人、あるいはヒドラという覆面で顔が分からないヨハンの私兵であり、彼が作ったチームも、様々な民族から構成されている。神経質なばかりに「アメリカ万歳」を出さないように注意を払っているのかが分かろうというものだ。そんな事もあって、物語もきちんと戦争のことを描こうとしているようだ。
スティーヴは唯一の超人として大切にされるが、そんな彼のなすべき任務は、その肉体を見せつけて宣伝をすることだった。これも大切な任務には違いないが、自らがピエロに過ぎないと言う事を否応なく実感させられることになる。このテーマを掘り進めたのがイーストウッドの『父親たちの星条旗』(2006)だったが、ここでは“キャプテン・アメリカ”という名前自体がとても皮肉なものとして使われていることが特徴と言えよう。アメリカにおけるヒーローとは、宣伝によって作られるものである事を端的に示しているのだから。
彼は歴史上には、たんなる宣伝の人間だけとしか現れてないが、その姿が見えなくなって、誰も彼の名前を知らなくなった時に本当にヒーローとなったのだ。
この辺の設定がしっかりしていてとても面白い。
ただ、そこまではとても良かったのに、最後の一番盛り上がる場面でとてもありきたりなアクションになってしまったのが残念。ここまで工夫が出来ていたのだから、最後も何かしら工夫を入れて一風変わったアクションを入れて欲しかった。一番盛り上がるシーンで醒めてしまったので、どうしても点数は低くさせざるを得なかった。
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