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[コメント] ナイトメアー・ビフォア・クリスマス(1993/米)

「デザイン」の映画。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画の主人公ジャックはクリスマスを観念としてではなく、具体的なデザイン(の集合)として理解する。ハロウィンに飽いていたジャックがクリスマスの存在に衝撃を覚えるのは、観念あるいは全体としての「クリスマス」を形成する個々のデザインが彼にとって未知のものだったからだ。そして彼が人間の世界で繰り広げる失敗もまた、あくまでクリスマスをデザインとして捉えていたことによる。

ここで、そのジャックの姿はティム・バートン本人に重ね合わせてみることもできよう。バートンあるいは本作の監督ヘンリー・セリックも、映画をまずデザインの集合として捉えている。誤解をおそれずに云えば、バートンとセリックの態度は「デザインありき」である。しかし、それが必ずしも物語やテーマの軽視につながっていないというのが彼らの偉いところで、要するにデザインそれ自体がキャラクタ性や物語を導いているのだ。

たとえば、縫い糸で継ぎ合わされた体を持つサリーは、その糸を解いて腕を切り離すことでフィンケルシュタイン博士のもとを逃げ出すし、また同じ方法でサンタクロースを助け出そうとする。ウギーブギーの「やられ方」も彼のデザイン(体が虫の集まりでできている)と不即不離の関係にある。

バートンの映画が面白いのは彼の生み出すデザインが面白いからなのだが(もちろんそれだけではありませんが)、同時に彼に信頼をおくこともできるとするならば、それはデザインから出発して「映画」(よりナイーヴな語を用いれば、「真実」)に近づくことを目論む彼の態度が、視覚メディアとしての映画においては端的に正しいからだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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