[コメント] 海燕ホテル・ブルー(2011/日)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
原作ものだから仕方ないということなんだろうが、実に若松っぽくないタイトルだ。
冒頭、背中向けた紫の傘の女片山瞳は四分の一ほど経って伊豆大島に再登場し、正面を向くと老婆で「若い頃、遠い処から連れてこられた」と云う(当然に慰安婦の含みがある)。ホテルに入ると正面からでも若い女になる。
山麓を裸で走る男女は『処女ゲバゲバ』。ほか60年代の諸作が想起される。女は消えていなくなくなりまた現れ、老婆に変身したりするサイレント仕様のB級ギミックがいい。これも自己引用だっただろうか。
片山は地曵豪が廣末哲万と殺し合っていても関心がない。廣末のように、地曵も片山瞳に惹かれる余り、井浦新の銀行強盗の誘いを断る。その他出てくる男連中は全員が片山に惹かれて善行に向かう。ファムファタールは転落を誘う女であり彼女は真逆で、最後に観音さまと判明する。あっけらかんとしたものだ。
刑務所は狙い撃ちされ、病人の見殺し、犬食いなる独房での手を使わない食事の仕方、「刑務所五訓」が告発される。大西信満の警官は常連客を射殺し、主役ふたりを射殺して観音さまに成敗される。若松の官憲嫌いは有名だが、ここまでの悪辣な描写はひとつ突き抜けており、強烈に印象に残る。
ゲバラのシャツ着た青年がカメラ目線で原発反対を叫ぶ2011年。囁くような会話がしばしば聞こえにくいのは録音のせいか。ジム・オルーグの音楽は実に正統派で、映画は前衛はしないと決めていたのか。
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