コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] この空の花 長岡花火物語(2012/日)

無駄に長く陳腐なストーリーと通常の映画文法を無視した作りは見るに耐えない。思想的にも到底受け入れ難く、あまりにイラついて翌日も尾を引いた。ここ数年でも一番腹が立った。
パピヨン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







これはクソ映画だ。

そもそもストーリーが致命的につまらない。 被爆者2世で勝手に影響を恐れた松雪泰子が高嶋政宏と別れる。18年後に手紙を受け取りそれがきっかけで長岡を訪れ、いろーんな人の話を聞いて自分を見つめ直し、家族を作ろうと決意を新たにする。 その過程で高嶋政宏と復縁するというような人間関係が変化する訳でもなく、ドラマらしいドラマがある訳でもなく、話を聞いたり幽霊少女の劇を見て意識が変わっただけである。 そもそも松雪泰子は40前半だろう。はっきり言って子供は無理だ。

もう冒頭からダメな感じはした。いきなり場面はぽんぽん飛んで時制が頻繁に変わるし、やたら説明が入るし、登場人物が何か言う度に妙なテロップが入る。そしてやたら観客に話しかける。頼むから俺に話しかけないでくれと思った。後半では「何でこいつ明後日の方向に話してるんだ?」と思ったら俺に話しかけてるシーンもあった。こんなメタ演出いらねーよ! たまたま出会ったタクシードライバーはやたら戦争に詳しく、たまたま通りかかった農家は不発弾を持っている。偶然にも程がある。ここで「この映画はおかしいぞ」と思った。

その後花火の話やら戊辰戦争の話やら色んな話になるが、延々と色んな体験談を聞かされるのは一貫している。この辺はまだ観られたが、空襲の体験談を延々と聞かされるのは心底うんざりした。こんなの劇映画でやることじゃない。そういう話をしたいなら初めからドキュメンタリーでやるべきだ。複数の人が入れ替わり実際の空襲の体験談を話していく、これはドキュメンタリーの手法だ。松雪泰子は言わば案内役であるが、それなら初めから松雪泰子を案内役にしたドキュメンタリー映画にするべきだ。しかもモデルになった本人が本編中に「◯◯のモデル」というテロップ付きで登場するのには参った。大林宣彦は劇映画として体裁を取り繕う気が全くないのだ。

大体延々と空襲の体験談を聞かされた所で結論は分かりきってる。「戦争はよくない」ってことだ。んなこと皆知ってるよ! それに毎回思うがなぜ日本が全面的に悪いみたいになってるのか。アメリカも大概だろう。この映画は「戦争はよくない」とバカの一つ覚えのように連呼するが太平洋戦争の原因については全く触れてない。そこはちゃんと押さえろよ! 反戦も大いに結構だが主張するならまず面白いものを作って欲しい。これを観るなら『西部戦線異状なし』や『二百三高地』を観たり、『はだしのゲン』を読む方が遥かにいい。

話はどんどん拡大して豪雨の話やら地震やら原発やら色々出てきて段々収拾が付かなくなっていく。地震の話で騒ぎを起こさなかったとして「日本人の美徳」がさんざん強調されるが、あまりに一元的な見方。確かにそういう面もあるが略奪もあったし、福島から越してきた子供がいじめられるなんて話もある。震災瓦礫の受け入れ問題もあった。そういう負の面に触れないでひたすら美徳を強調するのは違和感がある。

一元的と言えば資料館の館長が「戦後はアメリカの文化に洗脳されてダメになった」みたいな話をしていたと思うが、あまりにも極論すぎて必死で笑いを堪えた。

普通の劇映画が好きな自分としては到底受け入れ難い上、話も面白くないし無駄に長い。 実につまらなかった。 『ハワイ・マレー沖海戦』も劇中で取り上げられるが、はっきり言って『この空の花〜』なんかより遥かに面白い。

(評価:★1)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ぱーこ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。