[コメント] エクスペンダブルズ2(2012/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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一般には「ソバットしかやってない」と言われるかも知れないけど、あの年齢でだよ。ちゃんと出来るかどうかだけで観ててドキドキするよ。まあ見事に4回もやってくれたけどね。
で、だ。
本作は確かに底が浅い。まだ物語性を持たせようと言う努力が見える一作目と較べても、物語性は後退してる。
なんせ敵の目的は核兵器だし、主人公達のモチベーションは仲間一人を殺されたから。これだけで物語は終わる。敵の首領の名前はヴィランであり、その組織サングがやってることは丸ごと「北斗の拳」。ここまで単純だと、90年代の低予算アクション作品の核はほとんどこれで終わる。
ならばこれは90年代アクション作のノスタルジーなのか?
それは半分当たり。確かに本作はそのノスタルジーあってこそ意味を持つ。「ああ、あの作品でスタローンは(あるいはシュワルツェネッガーは、ウィリスはでも可)ああ言うことやったよな。ここでもやるのか」という感慨が本作の最大の強みだ。実際冒頭及びラストの戦いは叫び出したくなるほどの快感を得ることができる。お行儀よく座って黙って観るより、仲間達とワイワイ言いながら大声で笑いつつ観ていった方が似合う作品でもある。
だが同時に本作は大きな挑戦も含んでいる。一作目のレビューでも書いたが、一つには、そこには自虐的な意味合いがある。これまでに自分達はこれだけ体を張って、こんなに単純なものをしてきた。それらが受けが悪かったこともあるし、確かに歳食って、昔ほど客を呼べる訳じゃない。でもどうだ、こうやってつくったら面白いだろう。その構図がある。より単純にすることによって、ますますその度合いを高くして見せた訳だ。
これはつまり自虐的部分はあるとしても、アクションヒーローとして世に認識され、世界中の人々に愛されている彼らが、自らを振り返って、その存在を問いかけた作品である。かつてヴァン・ダムが『その男 ヴァン・ダム』(2008)でやったものと同質でもあるが、あの作品では自らの存在を徹底して否定したのに対し、本作は自虐ではあるものの、否、自虐であるがために、それを肯定として受け止めているのが特徴でもある。自分たちのこれまでしてきたこと全てをひっくるめて肯定して見せたのだ。
そのため、バンバン残虐なシーンが出てくるくせに、ほとんど全体を通して笑いっぱなし。それはスタローンとステイサムの掛け合いであったり、シュワとウィリスの自虐ギャグのやりとりであったりする。内輪受けかもしれないが、それを楽しそうにやってることで、その自分自身への振り返りが徹底して陽性のものであることをはっきり示していた。
そしてもう一つ。本作の物語を単純化することで、どこまでアクションで楽しませられるか?という挑戦もあったかと思われる。これまで本当に多くのアクション作が作られてきた。物語はより単純に、アクションスターのキャラを活かす形で作られてきたが、それを更に押し進め、ストーリー性を封印したことによってこれまでのどんなアクション作を超えるものを作ろうという挑戦も感じられる。
まだそれらの事柄に対して遠慮がちだった一作目と較べ、本作はそれを見事に押し進め、最高の娯楽作へと仕上げてくれた。
…でも、いろいろ理論や構造こねくり回しても、結局この作品での本当の楽しみ方は「ヒャッホー!!!」で良い。
掛け合いで笑い、ステイサムのアクションに酔い、チャック・ノリスが現れただけでにやにやする(軽機関銃片手で何十人もの敵をぶち殺し、戦車まで破壊したとしても、ただそれがチャック・ノリスであるというだけで納得させられる存在の説得力)。そしてあの年齢で今もなお後ろ回し蹴りを決めてくれるヴァン・ダムの美技に酔う(というより、それが本作で一番はらはらするシーンなのかもしれない)根元的な映画的快感が本作にはある。その快感に酔いしれることこそが本作の最大の楽しさなのだから。
そして、この作品はスタローンが主役であるから成り立つことを納得して、高揚した気持ちで映画館を後にする。それだけで幸せになれる作品。
それでいい。いや、それがいい。
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