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[コメント] 希望の国(2012/日=英=香港)

福島での取材をベースにしているにもかかわらず、「福島の後」として今回の話を構築してしまったため、観客に与えるリアリティを損ねている。それがとてももったいない。
Master

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ヒミズ』でいち早く震災現地のイメージを映画の中に組み込んだ事は評価したが、どうしても「取ってつけた」というか本筋のストーリーからすると効果的ではなかったと指摘したが、本作においてはあらかじめ中心に据えて構築しているため非常に効果的であった。

しかしながら、今回は「リアリティ」が犠牲になっているように思う。

具体的には原発から同心円状に設定される避難地域、二・三日とりあえず様子を見るための避難。同一国家内でモデルケースを経験していればホイホイと地域住民が納得するか疑問が残る。このようなポイントが頭に残るため、スッとストーリーが入ってこないのがとてももったいないと思う。これは別に完全なパラレルワールドの日本としてしまえば解決できる問題であるだけに、とても残念である。

とは言え、やはりその取材ベースによる脚本で描かれるエピソードはどれもなかなか強烈である。庭に警戒区域の境界が引かれた家をはじめ「長島県」と「長島県の原発が爆発」以外の台詞はほぼ取材通り(※)との事で、いまだに震災について知らない事、わかっていないことが多いと気づかされる。

こういった話は本来ドキュメントの範囲から出てくるべきものであるにもかかわらず、エンタメの側から提示されたことをドキュメント作家は反省すべき。その意味でとても意義のある作品であることは間違いがないと思う。

※Quick Japan Vol.104 P124〜128 園子温×松江哲明 「希望の国はどこにある?」より

(2012.11.02 ミッドランドスクエアシネマ)

(評価:★4)

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