[コメント] オクラホマ!(1955/米)
続くシャーロット・グリーンウッドの農場の家へ向かうカットも、まるでジョン・フォードのような豊かな時間。とても美しいオープニングだ。しかし、この後、中盤、後半に至ってどんどん陰惨なムードになる。ミュージカルらしい能天気さが全くない、とは云わないが、決して明るくない。それは、端的にはロッド・スタイガーの位置づけにある。ジンネマンも彼が本作の肝だという認識なのだろう。登場した途端、一人まとっている空気が違う。(そもそも、我々観客も、スタイガーがミュージカルに出演しているという事実に、嫌な予感を覚えてしまう。)
そして、主人公の敵役とは云え、ラストまで扱いが酷過ぎて可哀想になってしまうのだ。スタイガーも含めてハッピーエンディングとなる帰結までは求めないが、それにしても、手放しで幸福な気持ちにはなれないエンディングだ。また、スタイガー以外にも、グロリア・グレアム、バーバラ・ローレンス、ジェームズ・ホイットモア、ジェイ・C・フリッペン、というようなフィルムノワールの匂いのする役者が脇を固めており、中盤以降、夜のシーンも多く(例えばテーマソング「Oklahoma!」のモブシーンも夜の場面)、画面上も明るくない。意図的かどうか分からないが、暗さを志向しているという意味で、1960年代以降の悩めるミュージカルを先取りする映画と云えるかもしれない。
#配役等の備忘。
・シャーリー・ジョーンズはデビュー作。やっぱり可愛い。
・小母さんシャーロット・グリーンウッドが全編通じてやたら目立つ。
・『孤独な場所で』のグロリア・グレアムがちょっとアホな隣人役。下手な歌。
・エディ・アルバートはあやしい移動雑貨屋。
・グレアムのために50ドル稼いでカンザスシティから帰って来たのがジーン・ネルソン。この人のダンスがひとつの見どころになっている。
・グレアムの父親がジェームズ・ホイットモア。この人は判事でもある。
・夜のダンスパーティのシーン。ジェイ・C・フリッペンが仕切っている。このダンスパーティからオークションのシーンへとかなりテンションが高い。
・『情無用の街』『深夜復讐便』のバーバラ・ローレンスが奇声の友人。
・終盤、グレアムとローレンスという犯罪映画のヒロイン二人の対決が見られる。
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