[コメント] ヴェラクルス(1954/米)
渋い劇伴が流れるが、ストリングス部分は抒情的だ。ロングショットの孤独な感じがいい。単騎の男はゲーリー・クーパー。馬は跛行している。左前肢が上手く使えていない。中継所のような小屋の前でバート・ランカスターの登場。馬をめぐるやりとりが始まる。冒頭すぐに2大スターの共演パートがある、というのも本作の良い部分だろう。
とても有名な西部劇で、私は子供の頃から何度も見たことがある(大人になってから、大井武蔵野館でも見た)のだが、実を云うと、あまり好きな西部劇ではなかったのだ。先に好きになれないところを書いておくと、2人、もしくは数人の人物の縦構図ディープフォーカス。これをイヤって云うほどやるところ。ちょっとこれみよがしじゃないか。あと、全体に色遣いが好きじゃない。一番顕著な場面は、マクシミリアン皇帝−ジョージ・マクレデイと伯爵夫人−ドニーズ・ダルセルが登場するパーティシーンだ。蝋燭を撃って火を消す競い合いのあるシーン。こゝの色遣いは、安っぽいと思う。これが、屋外シーンでも同じような緑色の目立つ色調で統一されているように感じられる(政府軍の軍服も緑っぽい)。
しかし、今回見直してみると、いやあ感心することしきりでした。冒頭の2人のやりとりからそうだけれど、特に、序盤の、ニナ−サリタ・モンティエールが登場する町の中で、ランカスターやクーパーと、政府軍、さらに反乱軍が出て来て対峙する場面や、上記パーティシーン以降のヴェラクルスへの旅のパートからも、めちゃくちゃ肌理細かくカットを繋ぐのだ。例えば行軍の遠景を繋ぐシーンなんかでも、普通の2倍ぐらいカット数があるように思う。それも、はっきりカメラ位置を変えたショットだと分かるカット割りだ(カメラ位置を変えずにレンズだけ交換したような繋ぎではない)。まずはこれに感激した。
あるいは、ランカスターの子分役のジャック・イーラム、アーネスト・ボーグナイン、チャールズ・ブロンソン(ブチンスキー)と、皇帝軍(政府軍)のリーダであるシーザ・ロメロといった俳優たちは、かつて見た時から認識していたと思うが、今回は、ロメロの副官(大尉)−ヘンリー・ブランドン(『捜索者』や『馬上の二人』では先住民の酋長)、反乱軍の将軍−モーリス・アンクラム、序盤で出て来てすぐに退場するジャック・ランバートなんかも面白く見た。それと、祭りのシーンなどでダンスを披露するバラード役のアーチー・サヴェージという人も今回認識したが、ダンスシーンの身体能力とそれを見せるアクション繋ぎの見事さにも驚いたのだ。
終盤の、要塞のような町に立て籠ったロメロやブランドンの政府軍と、革命軍との決戦、突入シーンは、矢張りあっけない描き方だと思ったが、尺は短いながら、ガトリングガンも繰り出して、ほとんど戦争映画と云っていい迫力だ。だがこれぐらいの簡潔さでいいと思う。誰もいなくなった町の一角で、ラストの決闘シーンになるのも早い展開でいい。尚、昔は、私もクーパーよりランカスターの方が断然目立っていると感じたが、今回は、拮抗しているように思った。クーパーの、余裕を持ったスマートさに魅せられたのだ。あるいは、ランカスターは、ニカっと笑う場面だけでなく、伯爵夫人をしばくシーンなどの怒っている時でも、口を横に開いて、白い歯を見せていることが分かり、過剰に頑張っているようにも感じられた。
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