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[コメント] 13号待避線より その護送車を狙え(1960/日)

鈴木清順は1958年の『青い乳房』あたりで既に、空間の二重構造的な不思議な画面センスを見せているのだが、本作では活劇のプロット運びに専念したように思う。実にスピーディでワクワクさせる演出なのだ。
ゑぎ

 尚且つ、あっと驚くようなピンポイントの演出もある。例えば、熱海のシーンで、小沢昭一が道に転がり落ちて、向こうから来た車に轢かれかかる(轢かれる寸前に車が停まる)のをワンカットで撮っている。あるいは、御殿場での、石油タンクトラックが炎上するかどうかの見せ場も、ギリギリセーフの見せ方が実に上手い。そして、ワタクシ的に一番驚いたのは、主人公の水島道太郎が乗っている、熱海から東京への列車と、ヒロイン渡辺美佐子が運転する自動車との併走シーンだ。ロングショットで同一フレーム内に収めたカットでは、一緒にバスも入っており、3つの車両の、併走ショットになっているし、列車内の水島から窓外の自動車を見せるカットは、スクリーンプロセスだろうが、まるで、フライシャーの『その女を殺せ』みたいじゃないか。

 さて、本作のもう一つの特記すべきポイントは、ヒロイン渡辺美佐子の魅力だろう。水島がアパートに帰ると、部屋に渡辺がいるシーン、あるいは、意識不明になった水島が病院のベッドで目を覚ますと、側に渡辺がいるシーン。ともすれば、単純なメロドラマのヒロインに堕してしまうシチュエーションを、渡辺への演出(そして渡辺の毅然とした演技)によって、犯罪映画の画面を獲得しているように思う。例えば、部屋の中の渡辺へのドリー前進移動。病院の廊下を一人歩く彼女を後退移動で撮ったカット。そして、エンディングの、機関車の操車場での銃撃シーンも、彼女のショットが、悲痛な映画の感情を十二分に形成するのだ。

#備忘でその他配役等を記述。

 冒頭、襲撃された護送車に乗っている、狙われた囚人の一人は上野山功一。小沢昭一の恋人のストリッパーは白木マリ。本作では、ほゞ見せ場なし。水島が聞き込みをする場面で、初井言栄がほとんどワンカットのみの出番。水島が世話になる部長刑事に松下達夫。渡辺美佐子の父親で浜十組の親分に芦田伸介。組幹部の安部徹が悪役。安部の仲間の悪役で内田良平長弘。ストリップ小屋の支配人役は野呂圭介。熱海の旅館の番頭は青木富夫だ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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