[コメント] 千年の愉楽(2012/日)
不評だなあ。私はついに枯淡に至った老境の作品として好ましく観た。若松はつねに「過激な図式」を提示し続けた監督だったが、この美男列伝は屈指のものと思う。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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中上の中心=天皇に対する周辺=路地(「部落とはもっと分厚いものだ」)という図式から、若松らしく天皇をすっぽり外しているのが本作の美点だろう。夫の僧侶は肝心のときに席を外させられるが、神道はついに影すら見えず、中心を失った美男共はただ順番に没落するのを列挙されるばかりだ。このような同族たちは日本のどの村にもいるに違いないというリアリティが醸し出されている。だからロケーションもこれでいい。彼等は現代の漁村にも延々と存在し続けている。
『火まつり』みたいなしつこいだけの失敗作を隣に置けば、本作の淡々とした描写群はとても好ましく思われる。中上の原作を粘着質に描くのはむしろ簡単なことで、そうしない処に異化するスタンスを見たい。次々と入れ替わる4人の男優好演。泥棒するのに随分力むのがリアルだ。美男子に生まれなくてよかったという妙な感想が実感された。小物の帽子も効いている。確かに佐野の顔は、何とかしてほしかった。
そして音楽が素晴らしい。エンドロールでも何も記されていないが、何というもの凄いお囃子だろう。
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