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[コメント] アンナ・カレーニナ(2012/英)

ジョー・ライトの映画はいつも「掴みはOK」
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ジョー・ライト、嫌いじゃないんだよね。 『つぐない』の時にも思ったんだけど、この人の撮る映画って、見方によっては重厚な映画にしてもいいわけじゃない? これ、例えばデヴィット・リーンが撮ってたら、やたら壮大で大がかりな長い超メロドラマになってると思うよ。だって『ドクトル・ジバゴ』程度の話であれなんだから。 でもジョー・ライトの映画って軽やかなの。その上ケレン味たっぷり。 変にご立派ぶった文芸大作よりずっと好感が持てる。 この「劇中劇」のギミックだって、私は嫌いじゃない。

ところがこの劇中劇、掴みとしては「OK」なんだけど、その後が続かない。 正しくは「一番面白い見せ方を最初にやっちゃった」感がある。そりゃもう、尻つぼみになるしかない。

だいたいさあ、ストーリー自体がそう面白い話じゃないんだよ。ロシア文学なんて今時ロシア人も読まないらしいじゃない。ドストエフスキーもそうだけどさ、雪に閉ざされてウオッカ飲む以外やることのない極寒の地の暇つぶしだったわけですよ。だからダラダラしてるの。勝手なイメージで話してるけど。 でも、そのダラダラさ加減が魅力なんですよ。いろんな登場人物が出てきて、話がアッチいったりコッチいったり。そのくせそれぞれのエピソードの完成度が高い。村上春樹が言うところの「総合小説」。 だから、これだけ何度も映像化されてる話をつかまえてナンだけど、本来2時間程度の映画にまとめる話じゃないんですよ。 私は、長編小説をダイジェストにする映画よりも、短編小説を引き伸ばした映画の方が面白いと思うんだかなあ。

結局この映画、ギミックは面白いけど、物語本来の面白さは描ききれていないと思う。 劇中劇の設定ほど映画自体はハジけてない。 実はジョー・ライトの映画はいつも傾向が似ている。ハジけた見せ方をしているようでハジけ切れない。

例えば、キーラ・ナイトレイはハッとするほど美しいんだが、物語が進むにつれ醜くなっていく。この常套手段をこの映画はとっている。 だけど思うんです。 いっそ逆に、彼女はドンドン美しくなってもいい。狂っていくほど美しくなり、美しさの頂点で命の灯火が燃え尽きる。それくらいのハジケ方があってもいい・・・と思うのは欲か?

(13.03.31 ユナイテッド・シネマとしまえんにて鑑賞)

(評価:★3)

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