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[コメント] クロユリ団地(2013/日)

前田敦子の、仄暗い情念の求心力や、幼児のような無防備さ脆さが、繊細に様々な感情を描く。その女優感は、作品自体の新味の無さを相当に補っている。感情を昂ぶらせるシーンでは、AKB時代の連想で、そのまま過呼吸にならないか心配になったけれど。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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家族団欒のシーン、ヒロイン前田敦子のカットと父母弟のカットが別々で、家族三人を捉えたカットはマエアツの主観ショットという時点で既に「家族は全員亡くなっており、彼らの姿はヒロインの幻覚」というネタにはすぐに気づかされてしまう。このような、カットによって無言のうちに事態を予感させるという手法は、巧いといえば巧いのだが。隣の部屋に引越しの挨拶に行ったあとのマエアツが一人で街を歩くシーンでの、孤立したままトボトボ歩いているシーンなど、効率よくお話を描写する意味では一見不要に思えるが、家族らから離れたときの彼女の孤独感が伝わる、効果的なシーンになっている。

一方、ミノルくんも、かくれんぼ中にゴミと一緒に焼却されてしまうという悲惨な事故に先立って、ゴミ箱の中で孤立するという苦しみも味わっていただろう。そこにヒロインとの共通項、絆を見出すことができるのだが、そこでヒロインの葛藤だけに集中すればいいものを、清掃業者(成宮寛貴)の植物状態に置かれた恋人というのを挿むのは余計。交通事故で自分だけ生き残ったという点でヒロインとの共通項があるわけだが、それに絡めて二人の感情的なつながりを描いているわけでもないので、この男の精神的な弱さのせいでドアを開いてしまう展開には、その直前までヒロインの葛藤(ミノルくんの寂しげな呼びかけのみならず、家族三人からの呼びかけまで受ける)を支えていただけに、やけにあっさり開いてしまうのには拍子抜けし、かつ呆れてしまう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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