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[コメント] モンスターズ・ユニバーシティ(2013/米)

人生の酷薄と希望をこれまで以上に危うい均衡で成立させ、まったく迷惑なほどに心をえぐる作劇だ。これは、少しばかり現実に似すぎている。怪物界を描くにあたって原色の濫用も辞さず、ピクサー製アニメーション史上でも一二を争う広い幅の色彩を採用することでかろうじてファンタジーを取り繕っている。
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米国大学あるあるの量産に力を入れすぎたためかどうかは与り知らないが、いかなるシーンも活劇性は期待に応える水準に達していない。また、マイクとサリーの関係性の変化過程は丁寧に描き込まれて説得力に富むものの、ウーズマ・カッパを主人公とするチーム映画として見た場合の物足りなさも否定しがたい。各員が短所と表裏一体であるところの長所を活かして満足にチーム感が演出された箇所は、せいぜい『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の企画「サイレント図書館」を彷彿とさせる怖がらせ大会中の図書館シーンのみだろう。

終盤、サマーキャンプのコテージか何かだったか、人間界に忍び込んだサリーとマイクが人間どもを恐怖のどん底に叩き落とすシーンでは、息の合った二人のコンビプレイもさることながら、そこで披露されるきわめて良質かつ正統的な恐怖演出に瞠目する。『トイ・ストーリー3』における巨大乳児も併せて思い返したとき、ピクサー・ステューディオがピクサー・ステューディオ式ホラー映画の可能性を模索していると考えるのは、あながち穿った見方でもないはずだ。

(評価:★3)

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