[コメント] 共喰い(2013/日)
一言でいうと、陳腐ではあるけど、「性の不気味さ、血の不気味さ」か。
非常にまとまった、引き締まった出来だったと思う。
5人の主要登場人物が、それぞれ明確な役割を持ち、ギリシャ悲劇的なまとまりを持っている。
思い浮かべたのは、浦上玉堂という江戸時代の画家。彼の山水画では、 山岳や雲は男根の姿で描かれ、谷間や滝は女陰を現しているという。
同様に、この映画でも、男根と女陰はいたるところに現れるのだが、また男性的なもの、(もちろんこの文脈では父性的なものでもいい)は暴力として噴出するのだが、 女性的なものがそれを向かいうち、そして最終的には鎮める。
玉堂の男根は、時代のなかで無為に勃起するほかなかったのかもしれないが(橋本治)、 遠馬の男根は一応鎮まった、とはいえるだろう。
上手いなあと思うのは、川の流れ、潮の満ち引きを通して、時代の流れを表す演出。 あざとい、というひともいるかもしれんが。
天皇云々の箇所は、個人的にはどうでもいいのだが、思想的なものよりも(そう解釈するとどうころんでも陳腐だ)、過ぎ去っていく時代の象徴として受け止めることにした。
「父性原理」云々の解釈は、よく使われるものだけれども、それはそれで陳腐にも思う。 男と女の様々なドラマはこれからも繰り広げられるだろうし、 性は、やはりこれからも人間にとって不気味なもの(それだけでないが) であり続けると思う。
ということで、誰もつけてないので、天邪鬼な自分は、5点。
追記: 仁子の立場からは、無くした左腕 義手→戦争、天皇 受けた暴力→円 円の殺害、天皇の死 → 義手を捨て去る といった図式が浮かび上がる。
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