[コメント] ニューヨーク、恋人たちの2日間(2012/仏=独=ベルギー)
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このシチュエーションを知的なくすぐりに富んだカルチュアギャップ・コメディとして撮らないところがジュリー・デルピーの鋭さだ、と云い換えてもよい。アルベール・デルピー、アレクシア・ランドー、アレックス・ナオンの異常性は彼らがフランス人であるがゆえのものではない。おそらく世界中のどの国民・民族を尺度としても彼らは異常であり「厄介」だ。先に「アッバス・キアロスタミのように」と云ったのはその意味にほかならない。キアロスタミのフィルモグラフィはそのほとんどが「厄介な人」をめぐる喜劇あるいは悲劇によって占められている。
さて、アルベール・デルピー、ランドー、ナオンをひとまとめに厄介トリオと呼ぶとして、しかしその厄介の質にかけては各々異なっている。その描き分け、入念なキャラクタ造型が映画にスラップスティックな暴走力を供給する。はじめはクリス・ロックとともに彼らの被害者であったはずのジュリーまでもが次第に厄介化していくという展開も巧みに演出されるが、その最たる箇所だった「脳腫瘍の嘘」が図らずも個展の成功を導いてしまうに至っては、強引なハッピー・エンディングとともに古典的な喜劇美を体現しているとさえ云えるだろう。
爆笑を強いられたシーンは十指に余る。ここでは最も鋭い切れ味を示したダイアローグとして、ミンガス役のロックがランドーに向かって「どうして俺の名を呼ぶ度に笑うんだ?」と難詰する件りを挙げておこう。「や、だって、似てるのよ。仏語だと。ミングスとクンニリングスが……」「英語でもだ!」
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