[コメント] 夢と狂気の王国(2013/日)
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「ジブリ行ってみたいんです〜。」「ジブリに来てる私すごい〜!」「駿ちゃんにこんなに信頼されてる私、超ウケる〜〜!!」
なんかずーっとこんなような事を耳元でささやかれながら鑑賞している気分になった。こういったあふれる自我の表現は『エンディングノート』でも感じたもので、あまり観ていて気分の良いものではなかったが、本作はそれがより強調されてしまっている。
『風立ちぬ』の公開前でかつNHKなどのドキュメントが放送される前であれば、確かにこのレベルのものでも価値はあったと思う。しかしながら、公式HPにも書いている通り既にジブリを扱ったドキュメントはそれこそ山のように存在している。そんな中であえてしかも『風立ちぬ』の公開後にぶつけるものとして、砂田監督は何をやりたかったのか。何を観客に見せたかったのか。
公式HPにはいみじくも「ジブリにしのびこんだマミちゃんの冒険。」というコピーがあるが、ジブリの中に潜入することが目的になってしまっていて、そこで何を撮りたいのか、全く考えていなかったのではないか。制作風景撮るだけなら、他に色んなところが「無料」でやっている。
今さら、庵野監督が堀越二郎の声優に抜擢される過程なんて見させられても何とも思わないし、ジブリ内の試写後に「自分の作品で泣いたのは初めて」と宮崎駿がスピーチしたことに時間取る必要性がどこにあるのか?「ここにも私いたの!みんなテレビで見てたでしょ!!」程度の意味ならバッサリ切るべきである。
そもそも「狂気」を見せたいのならハウルを降板する羽目になった細田監督に話を聞くとか、それこそ宮崎吾郎に密着する方がよっぽどジブリの持つ狂気の部分が出たはずで、そういう場面に同居しているにもかかわらずあの程度の尺しか使わないのは全く持ってセンスがないとしか言いようがない。
まぁ、宮崎監督のスケジュール管理をされている三吉さんが非常にチャーミングな方であることが分かったのが本作の数少ない功績である。そこは「でかした!」と思うので評価を2とする。
ドキュメントである以上、自我を捨てろとは言わない。編集する際に自我や思想が表出するのは仕方ないと思う。だからと言って、必要以上の自己喧伝は単に鬱陶しいだけである。
(2013.11.16 TOHOシネマズららぽーと横浜)
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