[コメント] ゼロ・グラビティ(2013/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
本当に凄い映像表現で、宇宙を体感した気になってしまう。まさにVR時代の映画だなあと素直に感動する一方、シナリオのパターナリズムが気にならないでもない。
例えば、冒頭、酸素が足りない状態で宇宙をグルグルしているライアン(サンドラ・ブロック)を写しているカメラがずっとヘルメット越しにライアンの表情を追っているのだけれど、やがてカメラがぐっと近づいていき、透明なヘルメットをすっと透過してライアンの表情を写し、今度はヘルメットの内側からライアンの目線になって宇宙を写し、またライアンの表情を写したあと離れていってヘルメットの外からライアンを客観的に捉える視点に戻っていくシーン。
非常に文学的で、素晴らしいんだけれども、同時に分かりやすすぎやしないかとも思ってしまった。これでもう、この映画はライアンが主人公なんだ、マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)は添え物なんだとわかってしまう。
マットとライアンは対照的に書かれている。軽いマットとトラウマを抱えていて重いライアン。
軽いつまりは重力から比較的自由なマットはやがて天に召されてライアンの守護天使となり、重いライアンは再び重力に引かれ地球に帰還する。
それが、この文学的なカメラワークでなんとなーく読めてしまって、あとは予定調和的に映画を見るしかなかった。映画自体が自らネタバレしてどうする!!!
閑話休題。
英語タイトルはグラビティで、映画はグラビティの不在のシーンが続くってのが、神の不在を問題にする西洋人の視点を象徴していて興味深い。そんなのに無頓着な日本人が着けた邦題はゼロ・グラビティだもんな。即物的というか何というか。配給会社は、無重力をアトラクションとして楽しむムービーなんですよーって売り方しか考えつかなかったんだろうな。日本でもヒットしたんだから正しかったと言うべきか。なんだかな。
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