[コメント] オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜(2013/米)
老齢にそぐわない頑健な肉体、殊に上半身の厚み。しかしいかんともしがたい身動きの鈍重さ。顔面には幾重にも深い皺が刻まれ、瞳は落ち窪んで一層小さい。それでもなお美しく輝く黄金色の頭髪。こんなことを想うのは私くらいかもしらないが、ロバート・レッドフォードのロジャー・ダルトリー化が著しい。
この企画のユニックな点は、この物語が必ずしも老齢の主人公を必要としていないという点だろう。この遭難状況においては、たとえ生命力に満ちた筋骨隆々の壮年男性であっても、ここでレッドフォードが試みたより他に有効な手立てを多く持てたとは思えない。云い換えれば、『オール・イズ・ロスト 最後の手紙』において、主人公が老齢であるがゆえに生じるピンチなりチャンスなりは描かれていない。改めてレッドフォードの近年の出演作を振り返ってみると、その役柄はもちろん年齢相応に「祖父」であったり何らかの「ベテラン」であったりもするが、たとえば同年輩の自作自演作家であるウディ・アレンやクリント・イーストウッドと比較すると、そこにおける「老い」の重要性は概して小さい。それはおそらく「老いを受け止めていない」とか「逆らっている」とかいうことではなく、レッドフォードの演技的野心が、彼が演じる役柄の年齢を不問に付しているためだろう。
作品の出来や不出来に一喜一憂することは当然あるにせよ、レッドフォードが自らの新たな一面をスクリーンに示し続ける限り、私もまたそれを喜んで目撃し続けたい。
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