[コメント] 儀式(1971/日)
河原崎と賀来、この2人の現在の時制に、過去がフラッシュバックする構成を取るのだが、最初のフラッシュバックの子供時代、段々畑のロングショットがとてもいい。既にこゝで瞠目してしまう。その後も、法事会場の俯瞰移動などスペクタキュラーな画面造型が連続するが、例えば、風呂の場面で、唐突に小山明子が入って来る部分があるが、この小山のアップ挿入が面白い!まるで鈴木清順みたいだ。このような、ちょっと脱臼ワザのようなカット挿入がすこぶる上手くいっている。
タイトルの通り、慶事や弔事が何度も出て来て、どのシーンも良く出来ているのだが、特に二つの結婚式周り、一つ目は小松方正の結婚式(花嫁は原知佐子)、二つ目は主人公の河原崎の結婚披露宴の周りのシーンが出色の出来だ。周りの、とわざわざ記述しているのは、いずれも、式、披露宴だけでなく、当日夜の、主人公を含めた若者たち(賀来敦子と中村敦夫ら)を描いた場面が見事だということだ。例えば、中村が日本刀の使い方を教えるシーンの迫力。河原崎が小山に日本刀を渡す、寝間での会話シーン。あるいは、気がふれたようになった河原崎を見ながら、通夜と初夜が一緒になった、と笑う乙羽信子の素晴らしさ。
さて、帰結の見せ方はどうだろう。確かに最後まで、画面造型に緩みは無いが、ドッペルゲンガーのような過去との交錯は無しにして、もっと簡潔な締め方の方が良かったんじゃないだろうか。地面に耳をつけて音を聞くことへ拘泥することも無くていいと思った。
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