[コメント] クロワッサンで朝食を(2012/仏=エストニア=ベルギー)
原題が参照しているのはもちろん『巴里のアメリカ人』だが、「アメリカ人」がそうであったように、ここでも「エストニア人」が原語において単数として記されているというのはにわかに意味深長である。要するに、各々の「孤独」を媒介としたライネ・マギとジャンヌ・モローの結合を作者は認めないらしい。
とうに傘寿も越えたはずのジャンヌ・モロー主演作と聞いて、どれほど老いぼれているものかしらと心配と期待を胸に抱いて劇場に赴けば、スクリーンに現れたのは想像以上にカクシャクとした姿。貴女はもう少し老け演技の勉強をしたほうがよろしい。という忠告は冗談として、齢を重ねても(単に「若く見える」というよりも)どこか少女の面影を残した人というのはやはりいるもので、とりあえずその代表格としては風吹ジュンさんを挙げておくが、このライネ・マギという小母さんもまさにそうだろう。終盤、彼女がキャリーバッグをガラガラ引いて曙光を浴びたパリの街並みを闊歩するシーンは、ようやくパリ映画としての面目を立たす気になったか、という以上に、膝上丈スカートの堂々たる履きこなしぶりが目に眩しい。ある種の観客層におもねったような装いをしつつも内実はずいぶんと意地の悪い映画のようだが、モローを踏み台にして小国の某女優でしかなかったマギを世界に売り出す企画とでも思えば、それなりに清々しい後味にすり替えることもできる。
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