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[コメント] ブルージャスミン(2013/米)

虚栄の中の善良もしくは善良の行きつく果ての虚栄。誰も彼女を責めることなどできやしない。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 彼女の人格設計に2点、おかしなところがある。少ないピースで全体像を浮かび上がらせる、映画芸術という手法の犯しやすい間違いではあるのだが。

 一点は、彼女が裕福な暮らしをしていた間、妹夫婦の存在を顧みなかったことになっている点。これでは彼女の根が善良な人間ではないことになってしまう。贅沢は他人に施すためにあるのだという彼女の演説が欺瞞になってしまう。まあ、自分がそういう立場になったことがないから知らないだけで、人間とはえてしてそういうものなのかもしれない。

 もう一点は、彼女が自らFBI に通報してしまう点。これも、のちに彼女が自分で自分を壊してまうことから、逆算して挿入されたエピソードなのかもしれない。だが、重要なのは、こういうことが実際にあったかなかったか、ではなく、こういう人物はいそうだと思わせられるかられないか、だ。粉飾経営みたいなものがいつまでも長続きするはずない。いずれ彼女の通報などに依らずとも、崩壊は訪れていたはずだ。だから、そこまで彼女を追い詰める必要はないのだ。もっとも、司法に悪事を訴えただけだから、悪いことをしたのでもないわけだが。

 実に自己流な映画の見方をしているものだ。もちろん私に言わせれば、彼女の善良さを映画の上で体現するため、とびきりゴージャスな女優の彼女を演じるのが当然だ。

85/100(14/07/19記)

※)いつかあの義理の息子が彼女の善良さに気づいて、そして妹とも協力して、壊れてしまった彼女に手を差しのべにくるはずだ。是非そうしてやってほしいのだ。

※※)手を差しのべる、というのは要するに『欲望という名の電車』のラストにそういうシーンがあったのだ。

(評価:★4)

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