[コメント] 都会の女(1930/米)
『サンライズ』より弱い作品だろう。都市と地方を問う主題はジャンル映画の紋切型に後退しているし、美術もさすがに比較すれば地味。ただ、喜悦溢れる小麦畑到着の移動撮影は箆棒で驚異的。ここだけで鑑賞料金は回収された。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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アメリカにとって1920年代は急速な都市化と農村の疲弊が一気に表面化した時代らしく。ルビッチとムルナウというドイツ出身監督が双方の極を描いたのは興味深いことだった。
先物相場は純朴な農村などもうあり得ないと語るのだろう。序盤の結婚コメディは愉しくていいのだが、結婚してから嫁を連れて帰るのは奇妙に見える。新妻のメアリー・ダンカンと父のデヴィッド・トレンスの確執、このふたりの喧嘩は迫力がある。「田舎の人は純朴と思ってたけど、安っぽい連中よ」。収穫の作業風景も印象的。巨大な刈込機が箆棒だ。収束は唐突な和解で駆け足に過ぎただろう。季節雇いの農奴たちが叛乱を起こす物語は芯を外しているだろうし、霰もイマイチ。ただあの小麦畑の中の横開きの扉の再登場が印象的だから許されてしまった。
チャールズ・ファレルは『第七天国』と似たボーとした造形でハマっている。メアリー・ダンカンも好演で、都会娘が田舎に馴染む呼吸でもって脈絡つける物語話法が的確だった(額の巻き毛を田舎到着で止めちゃうのが好感)。親爺にゾンザイに扱われる、科白はないのにとても印象的な子役の娘は後に『周遊する蒸気船』ほかで活躍するアン・シャーリー。
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