[コメント] 高い標的(1951/米)
車輪と車軸の動き出し。走行中の場面での、煙突のカット挿入、汽笛の音使い。車掌と機関士の関係など。また、多彩な登場人物(乗客)の描き分けも素晴らしい。本作は、リンカーン暗殺計画を題材としており、まずは、事前に暗殺計画の情報を入手し、これを阻止しようとするNY市警察のディック・パウエルが主人公。次にアドルフ・マンジューが、パウエルを助ける軍人を飄々と演じる。マンジューは、ボルチモアでの大統領演説会のために乗車している。また、マンジューと同じクラブカーの人物たちが、とても面白く描かれるのだ。リンカーン支持の奴隷解放論者で女性作家のフローレンス・ベイツ。南部支持の建設業者、ウィル・ライト。臆病そうな小男、パーシー・ヘルトン。NYから南部へ帰郷する兄と妹、マーシャル・トンプソンとポーラ・レイモンド。そして、兄妹に同行する黒人の使用人、ルビー・ディー。若きルビー・ディーが重要な役で、冒頭クレジットでも上位に表示される。「アンクルトムの小屋」に次ぐベストセラー(二匹目のドジョウ)を狙っている作家のベイツから、虐待経験についてインタビューされるシーンがあったりもするが、何よりも、主人公を助けるという意味において活躍する。
あと、もう一人重要な役で車掌のウィル・ギアがいる。パウエルは、列車内や駅で度々ひどい目に遭うのだが、ギアから、またお前か、という態度を取られるのが、クスリとさせられる。
アクションシーンでは、序盤で、パウエルに成りすまして席に座っている男、リーフ・エリクソンとの対決場面が、列車の下(車輪の間)での格闘シーンで、後にマンの西部劇の決闘シーンで見られる床下(サルーンのステップの下など)の演出を思い出した。こゝでの蒸気の使い方がいい。そして、終盤の連結部での格闘もよく撮れてる。車外の景色をスクリーンプロセスで合成し、汽車の疾走感をよく造型しており、スリルが何倍にも強化されている。
ラストは、修繕中(?)のホワイトハウスか、ワシントンD.C.の風景だと思うが、感動的な、とても落ち着きのいいエンディングだ。ちなみに、タイトルの意味は、背の高い男=リンカーンを指している。
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