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[コメント] 寄生獣(2014/日)

右手がマンガ。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作を映画の尺にあわせるため、必要なところを抜き出し、枝葉を落とした脚本がうまい。主演2人と主要な脇役たちも、原作のまるコピーというわけではないのに、原作のキャラを感じさせてあまり違和感がなかった。昭和を感じさせる泉少年の家、ラーメン屋、市場、薬局、河川敷の電車の高架下などのロケーション、さすがにPCとネットは出てくるが、ケータイを使っているところは見せないなど、原作の雰囲気を壊さないようという配慮なのだろうか。

見せ場のバランス、予算を度外視したっていうのではなく予算に見合った作りこみという感じのVFXの出来、本編と次回の完結編という2作での完結というまとめかたといい、スポンサー、マーケティング、映画ファン、原作ファン、とにかく四方うまくおさまっている。AKBの指原莉乃のバラエティで「映画で大事なのはリクープ(資金回収)」という監督なだけはある(ネタで言ってるところも多少あるんでしょうけど)。だから「ちゃんと」面白くできている。ただ、その分変な作家のこだわりのようなものがなく、比較のたとえが変かも知れないが、映画だけでなく他の映像の仕事もするという意味で似たようなタイプの大林宣彦と比べてまるで考え方が真逆なんだなあという感じ。監督はVFXで寄生獣の変形シーンに自分の趣味を託して納得しているっていうことなのかな、と思ってしまった。

そういう物の作り方の弊害というか、やはりどうしても疑問点をつけたくなったのが、ミギーの造形である。原作に忠実なフォルムなのだが、あれは、原作のマンガにおいて描かれているデフォルメされたふつうの人間の顔や体の線の延長上におけるフォルムなわけだ。人間を乗っ取り人間の相貌を再現しようとして成り損なったゆえのシュールな造形なのだ。だからミギーの造形はマンガの世界ではもっと実際の人間の外見に近いはずなのである。だからリアルな実際の染谷将太の右手にいると、そこだけマンガにしか見えないのだ。見た目に人間そっくりになれる寄生獣の変形能力からすると、ミギーはどういう美意識でああいうマンガのような姿になっているのだろう、ということになってしまうのだ。たいしたことがないようなことかもしれないが、原作を知らない人が見たら、なんでミギーだけがそんなにカワイくてマンガっぽいんだろうってことにならないのかなあ、と思ったりするのだ。それとも「だってマンガが原作なんでしょ」って思ってあらかじめ脳内補完しちゃう人の方が、「原作とかけ離れたミギーのリアルな造形に批判続出」する人よりも多い、という判断でやっぱり正しいのかな?

アニメ版で残念だったヒロイン村野里美を橋本愛が好演。そうそう、さほど押し出しが強くないけど、ちょっとこういう男子をからかうような感じがいいんだよね。ナチュラルにやっているけど橋本愛うまい。島田秀雄が学校で暴れるシーンでの東出昌大が美術部の女生徒の数を数えるシーンとか、映画としてもいいところもあり、後編では、後藤の登場、SATとの対決なども期待できそうで私としては続きが楽しみです。

(評価:★4)

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