[コメント] グラスホッパー(2015/日)
渋谷スクランブル交差点に代表される日常の真裏に隠れた闇世界。その非日常に巻き込まれた非力な復讐男の物語といったところだろうが、精緻に再現される渋谷の街並みと、殺し屋たちが暗躍する裏空間のありきたりな造形の「なじみ」が悪く絵空ごと感がつきまとう。
この「絵空ごと感」はおそらく、生真面目な教師(生田斗真)が非力な復讐男に成らざるを得なった心情を「巻き込まれ」の前提として、的確かつ簡潔に描かなかったことに起因している。だから、殺し屋(浅野忠信・山田涼介)たちの苦悩も、崖っぷち女(菜々緒)のあせりも、どこかマンガ的で地に足がつかず上滑りする。結果、非力な復讐男(生田斗真)は、日常と非日常の間で宙ぶらりんとなりリアルな緊張感が欠如する。
このシナリオ段階でのボタンの掛け違いが演出のチグハグさを誘引し、最後の最後までまで尾を引いて伊坂幸太郎ものの肝である「おぉ! そうだったのか!」という種あかしのカタルシスが「やっぱり、そうですか」的不発に終わる。
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