[コメント] 娚の一生(2014/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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原作好きとしては、不満だらけである。
原作のつぐみは、「一人で何でもできるが恋だけ苦手なキャリアウーマン、自分のことをよくわかっていて、さばけた性格」である。しかし映画のつぐみは「恋が苦手」以外は当てはまっているように思えず、相当幼く見えた。
何故につぐみは仕事を辞めて染色なんかやってるんだろう。原作のつぐみは染色なんかせず、在宅勤務に切り替えてバリバリ仕事していたのだが。恋に破れて田舎に引っ越した女は、生活費の足しにならないような芸術に身を投じていないと絵にならないってか。バカにしてるわ〜。
海江田に関しては、キャスティングが反則。海江田は、原作では小奇麗だが普通の五十代のおじさんである。そんな彼が積極的にアプローチしてくる意外性が面白かったのだが、若く見えて現役感のあるトヨエツなら、恋するハードルはだいぶ下がってしまう。それでなのか原作ほどの積極性もなかったし。
それに、海江田もつぐみ同様「大人の男」感が薄かった。初めて一線を越えた直後に実家に誘うって余裕なさすぎじゃないだろうか。中川(つぐみの元不倫相手)が現れたときも明らかに表情が曇っていた。ここは顔色変えずに玄関に行かせて後ろから足蹴でしょうがよ。(ついでに言うと、この場面直前の「思う存分愛しても良いと・・・」は海江田の最重要台詞だと思うのだが、何故言わせなかったか理解に苦しむ)
二人の恋愛部分の描写も、原作ではわりとコメディタッチだったのだが・・・。「靴下脱がせて」も、抱きつくと思わせといて探してきたネックレスつけてあげるのも(これもついでに言うと、あのサイズのネックレスどうやって探せたんだか)、大人のいやらしさしか出ていなかった。親戚一同の前での結婚宣言の場面も、姉の手紙を妻からと誤解する場面も、全然楽しくなかった。
原作が描いているのはただの「大人の恋愛」ではなく、「さばけた大人の恋愛」であり、「一人でも生きていける男女が、一人で且つ一緒に生きていく」様を描いているのであって、そこには喜劇だってある。それを原作から感じ取れないのであれば、映画化の意味がない。
ただ、好きな場面もなくはない。むしろオープニングはすごく好きである。
染色の布が揺れるのはやはり絵になるし、そこで抱き合う二人の男女も絵になった。手巻きの柱時計を使ってつぐみの成長を表現したのはとても巧いと思った。そこで電話が鳴って祖母の死を知る主人公。
ガヤガヤしたお葬式で始まる原作よりも、遥かに映画的なオープニング・・・期待してなかったけど、もしかすると名作の可能性も・・・?と思っていた直後、どうにもジメジメしたつぐみを目の当たりにし、期待するのをやめた。ラストなんて、「台風なめんなー!!!!」としか思わなかった。
中盤以降、海江田が探してくれたネックレスをずっとつぐみがつけていたのは可愛いかったが・・・もっと面白くできたはずだろうという怒りが最終的には勝り、☆1。本当に、なんで映画化したんだか。
最後に、もう一度言います。
皆さん、原作を読んでください。私がこんなにネタバレしても面白いです。
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