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[コメント] 掟によって(1926/露)

舞台はアラスカの凍河と、そのほとりの粗末な小屋だけ。厳寒のひと冬、閉ざされたそのあばら屋で手足を縛られた殺人犯と、その男に命を狙われた夫婦が対峙する。容赦なく攻寄る自然の摂理のなか肉体的にも精神的にも疲弊しきった者たちの極限の相剋の凄まじいこと。
ぽんしゅう

扱われる極刑の判断の正当性という問題は「死刑廃止」が進んだ現代にも通じる課題だなぁ、と思いながら観ていました。

ロシア(ソ連邦)映画にしては設定と登場人物が特徴的なので、その背景を調べてみた。時代と場所は19世紀末のゴールドラッシュのアラスカのユーコン川流域。金の採掘団(会社)のメンバーは5人。社長はスウェーデン人で妻はイギリス人。株主の無骨な男二人は国籍は明かされないがロシア人だろうか。彼ら4人が資本家でアイルランド人の労働者が一人だけという少し歪な労使関係。

もともとアラスカはロシアが発見した土地で、19世紀初頭にはロシア領アメリカと呼ばれたそうだ。その後、クリミア戦争に敗れ経済的に困窮したロシアは、イギリス(対戦国のひとつ)が関心を示していたアラスカをアメリカに売却したということらしい。(ウィキペディアより要約)

イギリス人の社長夫人が、殺人犯は私刑ではなく白人(現地人のエスキモーに対して称しているようです)は法律にのっとって人を裁くのが掟だというこだわりから、このドラマの核心が始まります。イギリスの法統治の象徴としてヴィクトリア女王の肖像画が再三登場するのですが、本作の製作時(1926年)のソ連邦にとって、これがどのような意味(批判的?)を持つのかが私には分かりませんでした。そこがちょともどかしかったです。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得

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