[コメント] コタンの口笛(1959/日)
企画自体が優れているのであり、教育映画として観るべき作品。何より美術が素晴らしい。ナルセはたくさんの橋梁をフィルムに収めたが、本作は最高傑作と思われる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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コタンの村の貧しい橋も素晴らしいが、札幌での橋もいい。このコタンの村の豊かな水量は、水車こそないがクロサワ『夢』ラストの笠智衆の件を想起させられる。これはあながち外してはいないと思う。
物語は尖っており、これまでもアイヌは差別されてきた、今は多少よくなったが結局差別はなくなるまい、という基調低音が始終鳴り響いている。志村喬の結婚差別など強烈なものだ。PC的にどうなのか判断の難しい処に踏み込んでいる。これらは原作の背負うべき功罪だろう。民族衣装の踊りを商売と断じるのも評価が分かれる処と思われる。アイヌを「あ、犬」と虐める級友は今のネトウヨと同類(「和人」は「しゃも」と呼ばれている)。
森雅之の労働者の造形は貴重。彼を殺しちゃう終盤はやや不幸のテンコ盛りになり、一家離散のラストの遣る瀬無さはいかにもナルセだが、ちとやり過ぎ。現代ならこの場所で生き続けるというラストが選択されただろう。山茶花究の厭な親戚はさすが。宝田明の先生の善人ぶりがいい。三好栄子と左卜全の絡みは珍しいかも知れない。キャメラは遠景の切替しにさすがの美しさがある。
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