コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 世界から猫が消えたなら(2016/日)

なんかクサーいタイトルだと思ったけど、見てみると意外と良くて反省。勝手な先入観は良くないね。
deenity

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作未読。小説や映画を見た人にちょくちょく勧められてましたが、結局今になって鑑賞です。だって何となくありきたりな雰囲気だったし主演が佐藤健だったし、ちょっと映画館に行くまでは気が進まなかったもので。でも結論から言えば、結構良かったです。映画館で見た方がいいかどうかは置いといて、それでも見てよかった作品ではあります。

世界から猫が消えたなら』というタイトルですが、寿命をあと1日と迎えた男がこの世界から何かを消すことで1日生き延びる、という作品。なるほど、そういう感じだったのか。着眼点は面白いな、と思いました。

この世界からもし電話が消えたなら。映画が消えたなら。時計が消えたなら。そしてもし、この『世界から猫が消えたなら』。何かこの世界は変わるのだろうか。 一つ一つのエピソードに関わる人物。それが彼女だったり親友だったり家族だったり様々ですが、実にほっこりさせる人達と出会い、温かい人達に囲まれていて、だからこそこの世界から消えていくことでその出会いすらも消えてしまったら、どれだけ悲しいことか。それを上手く表現していた。出会い、そして相手を思う気持ちとは裏腹に、無残にも黒く炭のようにこの世界から消えていく様は虚しくもハッとさせられるものがあります。

個人的にはやはり映画ですかね。映画のエピソードはズドンと来ました。濱田岳のキャラクターもよかったですが、「何か良い物語があってそれを語り合る相手がいる。それだけで人生は捨てたものじゃない。」という言葉は間違いなく名言です。

途中、「トムさんが死んだってこの世界は何も変わらないんだね。まるで初めからトムさんなんて人がいなかったみたいに。」という言葉があります。それこそクリスマスシーズンにもってこいの『素晴らしき哉、人生』でもテーマになりましたが、誰かが死ぬことでこの世界は本当にガラッと変わってしまうのか。現実的に考えて、そんなもしも話はありえませんし、例え誰かが死んだところでこの世界は何も変わることなく流れていくことでしょう。 じゃあ本当にそれでいいのか。自分がいなくなっても何も変わらず世界は回り、当たり前の日常が続く。まるでそんな人はいなかったみたいに。

そうならないために自分に何ができる。自分には何がある。何をすればいい。現実的にガラッと世界が変わるなんてことはありえない。だけどそれでも自分の死が誰かの人生のその後を変えるかもしれない。そこまではいかなくとも、誰かが自分の死を惜しんでくれるかもしれない。せめてそれくらいの人間でありたい。人だけでなく物だってこの世界から消えたら変わることがある。自分を囲むいろんな人、物を大切に思って生きなければいけない、と思わされた。 というかそう導いてたね。運びがよかった分、そこまで語らなくても伝わったろうに、と思う惜しい作品でもあった。さらにやはり佐藤健では死期が近づいて哀愁漂う人間を演じるにはまだまだだったように思うが、それでも見てよかった作品ではあった。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)tkcrows[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。