[コメント] 海よりもまだ深く(2016/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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昨年『海街diary』で見事日本アカデミー作品賞受賞という栄誉を受けた是枝監督。確かにこの作品は私にとっても2015年最高の作品だったと思ってもいる。
そして大概この手の力入れた作品を作った後はしばらく充電期間を置くことが多い是枝監督にしては珍しく、僅か一年後に本作が公開。割と早いスパンで本作が出来上がっている。
一応本作は実に監督らしい作品ではあった。これまで監督がテーマとしてきた家族関係に真っ正面から取り組んでいるし、一度崩壊してしまった家族関係を改めて問い直すというこのパターンは私自身にとってもツボにはまる傾向の作品である。
ただ、観ている間、何かが足りないような気がずっとしていた。
それが何か。
改めて考えてみると、それは“チャレンジ精神”と言って良かったんじゃないか?
監督が一本の作品を作った後、それなりに充電期間を置くのは、表面に見えるものだけでなく、その於くに掘り下げるべきもの、画面を通して、見たまんまではない何かが提供されることだった気がする。それを演出するために、かなり時間をかけていたのではないだろうか。その期間が少なかったと言う事は、新しい“何か”を入れることが出来ず、ありもので作ってしまったという印象を受けてしまう。
夢を目指していながら、生活に追われるいい加減男を主人公にするのは、確かに監督にとっては初めてかも知れないけど、前に『奇跡』で、そのような父親に振り回される家族を描いていることから、既に目新しさはないし、勝手し放題で亡くなった父親を再評価するという部分は前作『海街diary』でやってる。そしてそれに代わる新しい価値観が、少なくとも私には見えてこなかった。
作品としての質は高いし、ちゃんと微笑ましい笑いも取り入れてる演出も良い。何より役者がみんなちゃんとはまってる。全てにおいて質は高いが、もう一歩、「おっと」と感じさせてくれる何かを入れてもらいたかったところだ。
その「もう一歩」なんて面倒なことを考えなければ充分楽しめる面白い作品なので、それは私の求めすぎって事なのかも知れないな。
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