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[コメント] 淵に立つ(2016/日=仏)

どこにでも居る普通の中年夫婦。その間の溝を、これ程端的に描いた作品はない。悪魔という存在が、その溝を表面に露出させた。そして、一つのセリフ。それを聞いた時、ドキッとして、絶句した。
KEI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「正直、俺は蛍がああなって、どこかでほっとしたんだ。」

大体、男は自分の妻に対して、その妻の気持ちを考えずに好き放題しゃべっている、と妻からよく言われる私でさえ、この発言はマズい!と絶句した。

その前のセリフは「お前、あいつと出来ていたんだろう?」だ。これを優しく言うことで、お前の罪を許してやっているのだよ、という男のズルさが垣間見られる。その隠した心底は、お前がいないと困るんだ、というものだ。

だから、その後の方のセリフは「8年前、俺たちはやっと夫婦になったんだ」という一人よがりの‘俺たち夫婦溝なし’論を言う。

そして物語は、案の定、妻の猛ギレにあって離婚へまっしぐらとなる。そして、終盤に起きる出来事は、夫婦の復活などではない。溝なんてものは変わらず、永遠に存在するのだ。ではどうすれば良いのか。問題はお互いに橋を架けるかどうかなのだ。

男は‘ファイル保存’、女は‘上書き保存’という。この夫がこれから一生をかけて、今回のような救出劇を続けて行けば、いつか妻からも橋を架けてくれるに違いない、と私は思う。

(評価:★5)

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