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[コメント] NO ノー(2012/チリ=米=メキシコ)

レネ(ガルシア・ベルナル)の行動原理は体制に抗う意志ではなく、時代が内包する欲望に忠実に従う本能だ。思想ではなく表現が力を生んだ幸福な時代。洗脳でも扇動でもない、広告が、夢の先導者だった時代。消費欲が正当性を保持していた「最後の時代」のファンタジー。
ぽんしゅう

世紀末の狂騒のなか高度化した消費経済社会が飽和状態へ上りつめる寸前の1980年代。思えば、日本においても我々が、未来を想定し得た最後の時代だった。その後、経済成長を前提とした「広告」が語る夢は化けの皮がはがれ、無味乾燥な本音とねたみが支配する格差経済社会の只中に我々はいる。

今、この時代にレネならマーケッターとして何を語るのだろうか。枯れ果てた老広告マンは「俺が愛し、あの時代と寝ただけだ」などと、25年前を懐かしむのだろうか。劇中に流れる当時のプロパガンダメッセージの、青天井の明るさで歌い踊る老若男女のはしゃぎぶりを懐かしくながめながら、そんなことを考えた。

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