[コメント] 機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV 運命の前夜(2016/日)
安彦監督がどれほど関わっているのか判らないが、キャラクターの芝居が大仰になりすぎていることがどうにも引かされる。これは脚本にそって俳優に演技させてから絵を合わせたほうがいいだろう。そしてそれとともに自分を冷まされてしまったのが、「戦争」というものの安直な捉え方だ。
安彦はガンダムブームの頃、「ガンダムを見て戦争を考える」青臭いファンに苦言を呈していたはずだ。そもそもガンダムの物語は、スーパーロボット物という安直な疑似SFアニメのジャンルにリアルな背景を添え、そのやりすぎなほどにリアルな背景が年長のファンにもてはやされたものだった。だが、それがご都合主義ドラマに施された理論武装まがいのお飾りであったことはスタッフ自身判っていたはずだ。
フラウが泣き出してしまう理由。エンディングを飾る森雪之丞作詞の主題歌。ここには聴くに堪えない正攻法の反戦が歌われている。だが、ガンダムに求められた戦争ってそんなものだったか。所詮はロボットのドンパチであり、みずみずしい感性をもつ少年たちが陰鬱な未来を切り開く通俗チャンバラ物じゃなかったのか。俺はそれが判っていても斬新なドラマ演出とアクションに夢中になったが、決してリアルな戦争ではないことは判っていた。こんなに一部の英雄たちがクローズアップされる未来戦争などありえない。現代の戦争は名無しの人々に動かされるものであり、こんなに心動かされる武勇伝など存在しない。安彦にとってもそれは前提条件だったろうに、彼は誰に向けて語っているのか。
これが戦争でも、まして歴史でもないことは自明だ。老婆心を表に掲げる安彦の真意は、かつてのファンが生んだ子供たちにでも向けられているのか。そんな視聴者層がほんとうにいるのかはかなり疑問なのだが。
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