[コメント] 妻(1953/日)
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絶対に別れないかもしれないと思ったりした。最後の二人の言い訳、言い分を咀嚼反芻咀嚼反芻としていくとわかるのだが、互いに未練があることが明々白々だから、別れないで子供が出来ちゃうって想像が先行してしまう。なんだかんだで好きってのが見え見えだし。
そうなると子供が出来たら出来たで、あの後の夫婦生活に期待してしまうな。大阪に行った未亡人の子供と車の玩具で遊んでいるシーンを意図的に入れたと解釈すると、それは成瀬流のヒントの出し方だったのかもと思うから、この考えは自然の考えであり当然の願望じゃないでしょうか。男女二人が一つ屋根の下にいるんだし、子供が出来るのも自然というもんでしょ。
で、
淡々とした中に淡々ではない鬼気迫るもんが見えないところに埋もれていたし、この夫婦の間というか深い谷にある地雷ってのは無意識に踏むんでしょうね。多分「馴れ合って」いたりすると、「甘え」から「鈍感」になって互いの仕草や心を読みとる事を怠っていたんだと思う。そこから、その警戒心のゆるみみたいなものが、夫婦間の地雷を踏みまくるんだと直感的に感じた。所詮は他人同士なんだから、ソレは一生必要なのかなぁと。
「結婚してからじゃないと分からないよアンタ!」かとは思うけれど、他人の家族や自分の両親、親族なんかを見ていても「結局はそこに行き着くんだろうなぁ」と妙な、体験していないにもかかわらず妙にリアリティを感じられた。スクリーンから、自分の家の匂いが漂ってきそうなぐらいな勢いがある不思議な映画。そして、普遍性に富みながらも、独特な味が魅力の女優と俳優の何気ない存在感が隅から隅まで堅苦しくなくしていて、作品自体のアンバランスの中の気持ちの揺らぎが堪能できる面白い映画でした。
2003/6/5
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