[コメント] 湖中の女(1947/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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主観ショットには当然カットバックなどなく、視点には継続性が求められるのでいきおい『ロープ』以上に禁欲的な長回しになり、被写体の舞台芸のような演技を眺めることになる。結果、ファム・ファタールなオードリー・トッターの百面相など上手い女優さんだなあと魅せられるが、演技を重視するのなら舞台を観ればいいだけであり、映画でも的確に長回しを交えればいいだけという気がしてくる。
この方法自体が駄目なのではなく、この手法を生かす方法論の問題じゃないのだろうか。ロバート・モンゴメリーがひとりでいる状況が少な過ぎるし、室内が多過ぎる。車に乗って襲われる件は随分面白い。このようなショットが少ないのが残念な理由だったのではなかろうかと思う。
本作のキャメラはパラノイア的効果を生み出しているとスラヴォイ・ジジェクが書いている。「目の前の世界はつねに見えざる物によって脅かされ、対象がカメラに近づくこと自体が驚異的になる。あらゆる対象が潜在的にわれわれを脅かしているような気がしてくる」(「斜めから見る」)。
ジジェクも本作に否定的だが、私はこの効果をもっと突き詰めたら面白いものになっただろうと思う。本作はロバート・モンゴメリーが真人間に過ぎて、パラノイアなキャメラの効果が有効に示されたとは云い難い。
なお、ノアール映画ではよくあることだが、登場人物がやたら多くて物語を追いかけるのが大変。置いてきぼりにされて失敗作と云う人が多いのではという気もする。ベストショットは家主だと偽りつつ黒服で拳銃持って階段降りてくるジェイン・メドウス。
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