途中までは、レイはちゃんとマクドナルド兄弟をリスペクトしていたと思った。だから家庭を省みないが、熱く情熱を傾ける夫に、ローラ・ダーン演じる妻は、協力したのだと思う。誘った地元の仲間が、いい加減な店の経営をしてるのに腹をたてて怒ったのは、それだけ兄弟の作り上げたモデルが完璧だったのを判っていたはずだ。

でも、全然リスペクトなんかしていなかった。紳士協定が守られなかったことからも明らかです。していたのは、｢マクドナルド｣という名前だけ。結局、兄弟たちは｢マクドナルド｣と名乗る事すらできなくなってしまう。そして自分の名刺には｢ファウンダー(創業者)｣のでっかい文字。

レイには商才があったのは確かだ。彼には手に入れたいものができた。その為には兄弟は不要になったから、追い出した。冷たい男だが、それはビジネスの上の事だから、そういう事もあるかもしれない。もう少しレイの要求に、兄弟が折れていたら、展開は少しは変わったかも知れないが、最後の結末は変わらなかったと思う。

でも、手に入れたいもの(女)ができたら、その為には妻は不要になったから、追い出した。ここで、この映画は愛せないものになった。まだ妻の方から三下り半なら判るのだが、かつても浮気で妻を苦しめた夫の変化を敏感に感じとって、｢別れましょう｣と言ったのなら、まだ映画を見ている私たちも納得できるのに。

この映画のキャッチフレーズに｢天才か？怪物か？｣というのがありましたが、私には、怪物にしか見えない。