[コメント] 破局(1950/米)
これは矢張り、最良のマイケル・カーティスかも知れない。カーティスらしいディゾルブによるキビキビとした短いカット繋ぎが、特に後半のサスペンス場面を用意する部分で実に奏功している。しかもディゾルブなので、ある種の悲痛な情感も創出されており、見ていて胸が痛くなるような感覚がある。
本作は暗黒映画というよりは、かなりの部分、メロドラマでもあるので、そういう意味でハワード・ホークス『脱出』とは全く違った志向性の設計がされており、全くカーティスに適した企画だと云えるだろう。
主演のジョン・ガーフィールドとフィリス・サクスターはいずれもスターっぽくないけれど、しかし確固たる存在感で、追いつめられた男と女の造型に納得性を与えている。特にエンディングのサクスターの演技演出には感動する。また、パトリシア・ニールもヴァンプ役としての大胆な演技が面白いけれど、彼女が運命の女として描かれない、というところが本作の弱さに繋がってしまった。あと、ワレス・フォードの気の弱い小悪人ぶりもいい。
尚、前半のメキシコの酒場で「つばめ 」(La Golondrina、The Swallow)−『ワイルド・バンチ』でメキシコの村を後にするシーンでかかる音楽だ!−がかかったり、ガーフィールドが桟橋から家へ帰る途中で、アコーディオンを奏でる少年が何度か出てきたり、といった音楽の使い方も本作の切なさの醸成に寄与している。
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